アイフル被害対策全国会議
2005年8月24日
金 融 庁 御中
アイフル被害対策全国会議
代 表 弁護士 河野  聡
事務局 弁護士 辰巳 裕規
神戸市中央区東川崎町1−3−3
神戸ハーバーランドセンタービル10階
神戸合同法律事務所内
TEL078-371-0171/Fax078-371-0175
URL:http://www.i-less.net
 私たちは,過剰なテレビCM・借主や保証人の生活基盤を奪う高利不動産担保ローン・執拗な取立による被害・取引履歴の開示や過払金の返還などについて問題点が多い,消費者金融最大手の一つアイフル株式会社による被害の救済のために全国の弁護士・司法書士・被害者の会が結集した全国組織です。既に御庁には平成17年6月14日付で,貸金業者による不動産担保ローン禁止の意見書を提出いたしており既に御検討を頂いているものと存じ上げます。また貸金業者に取引履歴開示義務を認めた最高裁平成17年7月19日判決の直後の同月25日にはアイフルに対し400名を超える原告が3億5000万円を超える過払金・取引履歴不開示慰謝料の支払を求めて全国一斉提訴を行いました。
 私たちは,貴庁が先般公表された貸金業関係の事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)の一部改正について、次のとおり意見を述べます。
1.改正の概要(1)について
 「貸金業者の取引履歴開示義務の明確化」においては,取引履歴の不開示が行政処分の対象となることを明示したものであり賛成いたします。なお,『正当な理由』として『顧客等の弁済計画の策定,債務整理』が例示としてあげられていますが,この例示のなかに『顧客の過払金返還請求権の実現』が当然含まれますが,このことを明示することを求めます。また,かかる権利を実現するために『取引履歴』には「すでに完済した取引」も含まれることを明示することを求めます。貸金業者が顧客に過払金の存在を秘匿しその返還を怠りながら,他方で高金利で貸付を継続し暴利を貪ることは不公平ですし健全な業態とは言えないことは明白です。
2.改正の概要(2)について
(1) 顧客自身が開示請求をする場合の本人確認手続きの例示
 顧客自身が開示請求をする場合の本人確認手続きについて,「本人確認法」に規定する方法によることに断固反対いたします。「本人確認法」は,例えば銀行がこれから口座を開設して預金取引を始める際に,テロ対策・マネーロンダリングや組織犯罪の防止等の観点から,素性の明らかでない者について厳格な本人確認手続を定めているものであり,既に貸金業者と金銭消費貸借契約を締結し取引をしている顧客に対する「取引履歴の開示」の場面においてまで,そのような厳格な本人確認手続は必要ありません。むしろ,貸金業者による履歴不開示の口実を与えるだけとなり今般の改正の趣旨あるいは最高裁判決と抵触するものです。顧客は,住所・氏名・生年月日を記載した履歴開示請求書に署名をしてを提出すれば,業者は借入申込書の顧客情報と簡単に照合できるのですから,履歴開示請求書の提出だけで十分です。また悪質な貸金業者による本人確認書類の悪用の危険もあり,顧客の個人情報保護の見地からも逆効果です。
(2) 顧客等の代理人が取引履歴の開示請求をする場合の本人確認手続きの例示
 顧客等の代理人が弁護士または司法書士である場合には,本人確認書類(写しを含む)を提出することなく,弁護士または司法書士が本人から債務整理等を受任したことを記載した受任通知を提出すれば足る,とすべきです。前述の理由に加え,本人確認は,受任した弁護士・司法書士が当然におこなっているのであり,弁護士・司法書士には,懲戒処分・刑罰に裏付けられる厳格な秘密保持義務が存し,また事務所や電話番号は所属会に登録されて公開されており身分照会も簡単におこなえます。従って弁護士・司法書士から提出された受任通知だけで本人確認は十分におこなえるものです。従来の債務整理の実務も受任通知(FAX含む)だけにより取引履歴の開示は行われてきたのであり,何らの弊害も御座いませんでした。手続を煩瑣にし,多重債務者たる顧客に無用の経済的負担をかける今般の改正案は,任意整理実務に混乱と弊害をもたらすものであり到底容認しがたいものです。本来,貸金業者は故意に利息制限法を超える貸付を行い,法定充当再計算の必要性を発生せしめている以上,取引履歴を開示することは勿論のこと,本来は自らすすんで法定充当再計算を行い法律上有効な債務額を明らかにし,過払金が存すれば直ちにそれを返還すべき義務があるのであり,履歴開示について顧客に手続的・経済的負担をかけるのは筋違いもはなはだしいのであって,かかる不公正な貸金業者の業態に金融庁が加担する今回の改正案には絶対に反対します。
3. 新たな改正の要望点
 事務ガイドライン3−2−2において,貸金業法13条2項で禁止されている「偽りその他不正又は著しく不当な手段」に該当する行為として,「顧客等から過払金返還請求をなされる可能性がある場合において,その顧客の記録を破棄または隠匿すること」を加えることを求めます。貸金業規制法施行規則17条では,法17条と法18条にかかる事項を「当該契約に定められた最終の返済日(当該契約に基づく債権が弁済その他の事由により消滅したときにあつては、当該債権の消滅した日)から3年間保存すること」を業者に義務づけていますが,現在取引が継続中であるのに,取引開示請求に対して10年過ぎたので記録を破棄したと主張して10年分しか開示しない業者がなお多いことが実情です。これらの記録の破棄や隠匿は,まさしく「偽りその他不正又は著しく不当な手段」であり、顧客等の保護のためにはその旨を事務ガイドラインで明確にする必要があるものです。
 また,任意整理の実務においては,一人の債務者について債権者たる貸金業者が10社を超えることも珍しくはなく,受任通知・履歴開示の請求書も多数の貸金業者に同時発送しなければならないのが現状です。そして,任意整理を必要とする多重債務者はなお多数存在します。そもそも貸金業者が甘すぎる金利規制のために,市場機能により淘汰されることなく,今なお全国に過剰なほどに多数存在し,一人の債務者をターゲットに支払能力を明白に超える貸付を過剰なまでに行っている現状こそ異常なものです。貴庁におかれては,上限金利の引下げにより健全かつ公正な市場機能の回復を目指すとともに,貸金業法13条1項を実効化するガイドラインを策定し,過剰融資体質を改める必要があるものと考えます。
以   上