アイフル被害対策全国会議

2006年3月20日

金 融 庁 御中

アイフル被害対策全国会議
代 表 弁護士 河野  聡
事務局 弁護士 辰巳 裕規
神戸市中央区東川崎町1−3−3
神戸ハーバーランドセンタービル10階
神戸合同法律事務所内
TEL078-371-0171/Fax078-371-0175
URL:http://www.i-less.net

 私たちは,過剰なテレビCM・借主や保証人の生活基盤を奪う高利不動産担保ローン・執拗な取立による被害・取引履歴の開示や過払金の返還などについて問題点が多い,消費者金融最大手の一つアイフル株式会社及びそのグループ企業による被害の救済のために全国の弁護士・司法書士・多重債務者被害者の会相談員が結集した全国組織です。
 私たちは,貴庁が平成18年3月7日付けで公表された「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)の一部改正(案)」について次のとおり意見を述べます。

1.ガイドライン3−2−1過剰貸付の防止(2)「顧客に対し、必要とする以上の金額の借入れを勧誘してはならないこと」の後に「これには、顧客に対して返済を拒否する等により債務額を維持するよう要請すること及び顧客の要請がないにもかかわらず包括契約の貸付限度額を引き上げることを含む」旨を追加することについて
賛成である。
もっとも、これまでも過剰融資防止規定は存在していたのであるが、過剰融資防止が実効的に行われてきたとはおよそ評価できない。これを実効的に抑制・禁圧することが重要である。すなわち、貸金業規制法13条1項は、「貸金業者は、資金需要者である顧客又は保証人となろうとする者の資力又は信用、借入れの状況、返済計画等について調査し、その者の返済能力を超えると認められる貸付けの契約を締結してはならない」と過剰融資禁止を定めているところ、「返済受領拒否」や「貸付限度額の増枠」はまさに同条項に該当する過剰融資行為の典型例である。ところが、貸金業者は、民事訴訟においては同条項違反の主張に対し軒並み「同条項は訓示規定であり努力目標にすぎないのであって違反をしても民事上何らの効力を有しない」旨を主張する。ガイドライン3−2−1(1)が定めるいわゆる「50万円ルール」も半ば公然と潜脱されているのが現状である。そして過剰融資を理由に行政処分を申立をしようとしても貸金業規制法13条1項違反は、同法36条1号の業務停止規定の対象となっていないという見解から行政処分の対象とされていない。これでは貸金業規制法13条1項を受けたガイドラインの3−2−1の規定を明確化させたとしても実効的な過剰融資防止は実現できない。貸金業規制法13条1項違反行為は同時に同条2項に該当する場合があり得るとして、同法36条1号の業務停止規定の対象となり得るとの立場を明確にするか、ガイドライン3−2−1該当行為は同時に貸金業規制法13条2項を受けたガイドライン3−2−2該当行為に該当する旨を定め行政処分の対象となることを明確にすべきである。将来的には貸金業規制法36条1号を改正し、13条1項該当行為も業務停止の対象となるとすべきである。
2.ガイドライン3−2−1過剰貸付の防止に(5)として「物的担保を徴求して貸付けを行おうとするときは、資金需要者の収入、事業計画、保有資産、家族構成、生活実態、他からの借入状況、その返済計画及び金利など当該貸付けの条件等にかんがみて、当該担保物件を換価しなくても返済しうるか否かを調査し、その結果を書面に記録すること。なお、当該担保物件を換価せずに返済しうると認められない場合には、資金需要者が当該担保物件の換価の時期や換価後の生活方法について明確かつ具体的な認識を有していることを確認し、その内容も合わせて記録すること。保証人となろうとする者から物的担保を徴求する場合も、同様とする」旨を追加することについて。
資金需要者の収入等を調査し書面に記録することを定めた前段については賛成であるが、「担保物件を換価せずに返済しうると認められない」場合については、そもそもかかる貸付は「過剰融資防止」に違反するものであり許されないと解すべきであり、担保物件を換価することを前提とした貸付を許容するかのごとき後段の規定は貸金業者の不動産担保収奪を目的とした過剰融資を招くおそれがあるから反対である。
そもそも貸金業規制法13条1項を遵守するのであれば、借主の返済能力の範囲内で貸付がなされているはずであり、物的担保の換価を前提とした貸付は許されない。社団法人全国貸金業協会連合会が定める「貸付けに関する自主規制基準の運用細則(例)」でも、「 過剰貸付けの防止関係(基準1)」として「(1)常に基準1−(1)〜(8)を適正に運用し、貸金業の規制等に関する法律(以下「法」という)第13条(過剰貸付け等の禁止)及び第30条(過剰貸付けの防止「協会による信用情報機関の設立と利用について」)の立法趣旨を遵守しなければならない。基準1にいう過剰貸付けには、顧客の収入状況から将来返済が無理とわかっていながら担保権の実行を前提として貸付けを行うこと等も含まれる。」 と定め、担保の換価を前提とする貸付を「貸金業規制法13条1項」に該当する過剰融資行為の一例と位置づけている。過剰融資防止のための改正案が、全金連の自主規制基準よりも後退した内容となっており、担保権実行を前提とした貸付に「お墨付き」を与えかねない内容となっているのである。担保物件を換価することを前提とした貸付は過剰融資行為に該当し許されないことを明確にすべきである。その上で「万が一」担保物件を換価せざるを得ない事態が生じた際の物件所有者のリスク認識を確認するために、物件所有者が「当該担保物件の換価の時期や換価後の生活方法について明確かつ具体的な認識を有していることを確認し、その内容も合わせて記録すること」を義務づけるべきである。少なくとも借主や保証人の生活基盤となる居住用不動産を担保とする貸付は、これを喪失することによる借主・保証人やその同居の家族の生存権を脅かし、また、公的負担を増加させるものであるから一律にこれを禁止すべきである。
なお、同規定違反についても行政処分の対象となるように手当をすべきである。
3.ガイドライン3−2−1過剰貸付の防止に(6)として「保証人となろうとする者についても、収入、保有資産、家族構成、活実態、他からの借入状況及び既往借入額の返済状況等について調査し、実際に保証債務を履行せざるを得なくなった場合の履行能力を書面に記録するとともに、その履行能力を超える保証を求めないこと」を追加することについて。
基本的には賛成である。
しかしながら、保証人の履行能力を調査することも重要であるが、なによりもまずは貸金業者に借主の返済能力を厳密に調査させ、借主の返済能力を上回る貸付を許さないことを厳守させなければならない。かかる義務を怠って安易に過剰な融資を行いながら、その負担を保証人に転嫁することは貸金業者の自己責任原則にもとる行為であり徹底的に禁圧されなければならない。現行ガイドライン3−2−1過剰貸付の防止においては、「有保証」の貸付けを行う際の借主自身の返済能力調査・書面作成義務を明示的には規定していない。保証人の履行能力を調査し書面を作成を義務づける以前に、まずは借主の返済能力について調査をさせ、その内容を書面に記録させるよう義務づけるべきである。そして、保証人が保証契約を締結するにあたり、借主の返済能力・信用状態について十分な判断材料を与えられるように、借主の返済能力・信用状態を調査した書面を保証人に事前に開示する義務を定めるべきである。
貸金業者はもとより保証人からの債権回収を目的として、返済能力が明らかに存しない借主に対して高額の保証付融資を行うことがある(いわゆる「商工ローン」問題においては、「利息は借主から、元本は保証人から」という言葉に象徴されるように、専ら保証人の返済能力・信用状態のみに依拠した融資が行われ保証人被害が発生した)。ガイドライン改正案は、読み方を誤ればまさに「保証人ねらい」の貸付を誘発しかねない。貸金業者に自己責任原則を全うさせるために、借主の返済能力の調査と返済能力を超える貸付の禁止を徹底させ、これに違反する貸付による損失を保証人に転嫁することが無いようにしてこそ過剰融資防止規定の名に値するのである。
なお、自らは経済的利益を受けない保証人(法人に対する融資の際の代表者保証を除く)の「履行能力」については、保証人の生活破壊を招かないように、保証債務の返済を履行してもなお現状通りの生活を維持できるよう、余裕資金の範囲内にとどめるべきである。
また、同規定違反についても行政処分の対象となるように手当てすべきである。
4.ガイドライン3−2−2(1)を「契約の締結に際して、次に掲げる行為を行うこと」から「契約の締結又は変更に際して、次に掲げる行為を行うこと」に変更することについて
賛成である。
もっとも現行ガイドラインにおいても、契約変更時における行為も規制の対象とはなっていたものであるから、現行ガイドラインの適用範囲を明確化したものと理解すべきである。
5.ガイドライン3−2−2(1)に「(6) 債務者が自らの便宜のために求める場合を除き、公的給付が払いまれる預金又は貯金の口座からの自動振替を返済の方式として債務者に要請すること」を追加することについて
かかる行為は、違法年金担保貸付行為に罰則を課すことで禁圧をはかった改正貸金業規制法20条の2において、既に禁止されていると解すべきである。 すなわち、同法20条の2は、貸金業者が年金等の公的給付の払込まれる口座に係る通帳等の引渡を受けることと等を禁止し、これに違反した場合は刑罰が科せられる(同法48条5号の2)。そして、違反行為には、預貯金口座の引出し若しくは払込みに必要な「情報」の提供を求めることも含まれている。貸金業法改正の際には、既に公的給付が払い込まれる預貯金口座からの自動振替を要請する手法を採用する年金等担保業者が横行していたことを踏まえて行われた法改正であり、もとよりかかる脱法的手法も改正貸金業規制法は許していない。公的給付が払い込まれる預貯金口座からの自動振替を返済の方式として債務者に要請する行為には、必然的に預貯金口座の「情報」の提供が伴われるはずである。従って、これを貸金業者に法規制の対象外と誤解させるおそれのあるガイドライン改正は望ましくない。むしろ、端的に貸金業規制法20条の2に該当する行為の一例として、自動振替を返済の方式として要請する行為が該当することを定めるべきである。また、貸金業規制法20条の2は「政令」に禁止行為を委任しているのであり、貸金業規制法施行規則改正により自動振替を返済の方式として要請する行為を禁止行為として追加すべきである。なお、貸金業者は、債務者があたかも自らの便宜により自動振替を返済の方式とすることを求めた外観を作出する脱法をするであろうし、公的給付が払い込まれる預貯金口座から資金が流出することは、受給者の生活困窮を招く蓋然性が高いことから、かような例外規定を設けることなく一律禁止とすべきである。
6.追加すべき事項
ガイドライン3−2−2(1)あるいは(3)に次の行為を追加すべきである。
ア 利息制限法を超過する利息の定めがある貸付については、物的担保・保証人及び公正証書作成委任状を徴求してはならないこと。
貸金業法43条1項は、利息制限法超過利息の収受が有効な弁済とみなされる要件として、返済者が「任意に」返済をしたことを定める。しかし、最高裁判所平成18年1月13日判決等が判示したように、この任意性の要件は、事実上の強制となる場合も認められない。借主が不動産担保の換価をおそれ、保証人に迷惑をかけることをおそれ、あるいは公正証書による強制執行をおそれて返済をする場合も「事実上の強制」化の返済となるのであり、およそ任意性は確保されない。また、法定充当計算をめぐる債務額確定の紛争が発生する公算も極めて高い。従って、利息制限法超過利息の定めのある貸付については、物的担保・保証人及び公正証書作成委任状を徴求してはならないと定めるべきである。
利息制限法超過利息の定めのある貸付については、抵当権設定登記はできないと定められていることとの均衡から、根抵当権設定登記についてもこれを禁止すべきである。公正証書についても、そもそも利息制限法超過利息の定めを記載することが許されていないのであるから、かかる貸付についての公正証書作成委任状の徴求も禁止すべきである。
イ 持分や後順位抵当権の設定など経済的合理性のない担保権設定をしてはならないこと。
貸金業者は、債務者・保証人破綻時の法的債務整理を混乱させ、これを妨害することにより、貸付債権の優先的回収を実現することを目的に、経済的価値のない持分に担保を設定したり、余剰価値のない後順位抵当を設定する事案が散見される。かような担保権設定が存すれば、小規模個人再生における住宅ローン特別条項が利用できなくなるという弊害が生じる。特定調停手続においても利息制限法法定充当計算引直による解決を拒絶し約定債務の一括弁済に固執するなどの弊害も報告されている。不動産を任意売却することによる任意整理にも支障が生じる。経済的合理性のないかかる担保権設定を禁止すべきである。
ウ 信用情報を利用した融資勧誘の禁止
貸金業規制法30条2項は、信用情報を返済能力の調査以外の目的に利用することを禁止し、現行ガイドライン3−2−2(3)(2)も「信用情報機関から提供を受けた情報であって個人である資金需要者の借入金返済能力に関するものを、資金需要者の返済能力の調査以外の目的のために利用しないことを確保するための措置が講じられていないこと」を禁止している。信用情報はもとより過剰融資を防止するためにのみ認められているのであり、ゆめゆめ他社借入がある者に対し、一本化や金利の有利性を強調した借換勧誘(おまとめローン勧誘)をしてはならないのである。かかる貸付事案が仮に存するのであれば、信用情報の目的外利用として貸金業規制法30条2項違反、貸金業規制法13条2項違反となり、行政処分の対象となるのであるが、その旨を明確にするために、信用情報を利用した融資勧誘の禁止を定めるべきである。

以   上